逗子菊池タクシー株式会社 代表取締役社長 菊池 尚氏 インタビュー

インタビュー 「逗子市・地域エネルギービジネスの可能性」について

逗子菊池タクシー株式会社 

代表取締役社長 菊池 尚氏



逗子市は、2019年より環境省の補助金を利用して「逗子市・地域循環共生圏構築検討協議会」を開催し、多様な事業者、内外の識者を交えて「地域エネルギー会社の設立」についての調査、検討を行っています。

2021年2月5日に、市民の皆様への調査報告と、地域エネルギービジネスについてのセミナーが開かれました。

このたびの協議会、セミナーを経て、逗子市民であり、また長年逗子市で事業をされている、逗子菊池タクシー株式会社の菊池 尚社長にお話をうかがいました。

逗子菊池タクシー株式会社は、まだ逗子駅ができる以前の大正12年に創業。三代目となる菊池 尚社長は、逗子市の交通、商業、文化、防災等に深くかかわり尽力されています。

また、逗子市に設置された「platform ZUSHI BIZ」内の「逗子・葉山地域エネルギービジネス研究会」のメンバーでもあります。

今回、市の調査結果を受け、逗子市における地域エネルギー会社を通じた地域循環共生圏構築の可能性について、お話をうかがいました。



ー 現在「逗子市における地域エネルギービジネスの可能性」が検討されています。

このことについて、どのようにお考えですか。


逗子は恵まれた自然、風光明媚で温暖な気候の市です。

でも一方で、高齢化や市内に企業が少ないために財源不足である、という大きな問題を抱えています。

仕事柄、逗子市のいろいろな協議の場に出席いたしますが、「これから街がどのように存続していくか」と考える際に、市として「中身の充実・住みやすさ」を高めて生産年齢人口を上げ、子育て世代の方が住みやすい街作りが必要だと話し合われます。

自然環境の変化やこれから先の人々の暮らし方をふまえると、エコな街作り、バイオマスや再エネに目を向けることが必要となりますね。地域で考えられる再生可能エネルギーを検討して、地域のビジネスとして地域内で経済を循環させる、という今回の構想は、前向きに検討するべきだと思います。



ー 今回、逗子市での地域エネルギー会社設立の検討は、ドイツの「シュタットベルケ」というビジネスモデルを参考に、インフラに付随する地域課題の解決につながる持続的な事業としての成立を目指し、さまざまな角度から検討されています。

菊池社長は「逗子市の地域課題」として、現在、特になにを思われますか。


私の会社はタクシー会社ということもあり、一つには「交通・渋滞」です。

逗子は平らな土地が少なく、ハイランド、グリーンヒルのように山を開いた住宅地が多く、

また、一本入り込むとせまい路地になっているところも多くあります。

逗子はすべての道が駅に向かってできていて、駅をバイパスする道はありません。

観光客の多くなる夏場はもちろん、週末の買い出しや、平日の朝夕、雨の日の送り迎えの時間の渋滞には、困っている方も多いでしょう。

また、地震やゲリラ豪雨に対する「防災」も大きな課題ですね。

山が迫っているところが多いので、近年がけ崩れ被害が起こっています。

タクシー会社としては警察と連絡をとり、ボランティアとしてお手伝いをしています。

タクシーを走らせていて、信号機の不備をはじめ、がけ崩れや大水の兆候を見たらすぐに

連絡をすることになっています。「防ぐ」のはもちろん、「大事に至らせない」ためです。



ー それらの「逗子市の地域課題」の解決につながる事業は、どのようなものが考えられるでしょうか。


「交通渋滞」「脱炭素化」のためにも、今回検討された「市や公共機関のEV車の活用」、「EV車のシェアリング事業」はよいと思います。

タクシーは、ご高齢の方や車の運転に制約がある方のために「ドアツードア」で便利です。逗子駅からのバス路線もたくさんありますが、バスとタクシーの間を補完するものとしてEV車の活用による事業、できれば域内で作ったエネルギーでできれば理想ですね。

また、最近は移動手段としての自転車、とくに電動アシスト自転車が増えています。

車をスクーターに、スクーターを自転車に、と小さくしていくことは「渋滞」「脱炭素化」にとってよいと思います。ただ、道の狭さによる危険度や置き場などを考えると、自転車の環境整備も必要ですね。



ー 逗子市における「地域エネルギー会社」「地域循環共生圏の構築」について、菊池社長はどのように展望されていますか。


逗子市がどう存続していくか、住みやすい街作りをどのように行っていくのか、を検討する際に、「エコ」はお金がかかるものですから、それをふまえて考えていかないとなりません。

また、(私は商工会の仕事もしていますが)同じ値段ならば地域のものを買ってほしいな、との思いもあります。

市民みんなで無理なく、関われるところに関わってもらい、自分たちの街のことは自分たちでやっていかれればよいですね。よく言われていることですが「できることがあるのでは」と考えて、地域エネルギー会社を検討する際には、地域課題の解決とマッチングをさせて組み立てていかれれば、これからの逗子の街作りへの期待が広がりますね。

(2021年2月25日)

逗子菊池タクシー株式会社 

代表取締役社長 菊池 尚氏